《報告》とうほくNPOフォーラムin仙台2022 オープニングセッション

開催報告


※オープニングセッションは、キーノートスピーチとアンケート報告の二部構成で行いました。

◯キーノートスピーチ 武隈義一氏(富山県黒部市長/元復興庁参事官)
富山県黒部市の武隈義一市長をお招きし、「東北での経験を活かしたまちづくり」と題し、東日本大震災での緊急対応から復興支援の経験と現在の黒部市における取り組みをお話いただいた。

・東日本大震災後の復興支援
発災直後厚生労働省内対策本部、内閣府を経て、復興庁では、ボランティア・NPO連携・男女共同参画等を担当し、東北と大阪を繋いでのボランティアキャンペーンや移住促進など東北に関心を持ってもらうためのイベントなどを実施してきた。更により具体的な支援事業として、三県の連携復興センター等と連携するとともに、被災地と首都圏等とのリソースを繋ぐ被災者支援コーディネート事業や行政とNPOの連携推進のイベントも福島で数回開催してきた。このように最大課題であるコミュニティの再建へ取り組むNPO等の姿勢、行動を目の当たりにし、いつしか自分も「故郷 黒部で」と気持ちが湧いてきた。

・黒部市での挑戦
2022年4月、黒部市長として挑戦を始める。まず、地元で頑張る人を知り、その活動を支援する施策に取り組んでいる。東北では「まちのありよう」について、行政だけはなく市民が関わることが多くみられたので、それを参考に市民と一緒に考えるまちづくりに取り組んでいきたいと考えている。特に、若者たちとの関わりを大切に考えているため、参考としては、分野を越えた繋がりを生み、民間と行政との対話の場を設け連携の機会を生み出している気仙沼の『ぬま大学』の運営を参考にするなど、東日本大震災から生まれた活動の優良事例をモデルに市政の運営に役立てている。

・地域を元気にする方法~NPOに期待する力
地域を元気にする方法について、大きく3点に分けてそれぞれお話しを頂いた。
(以下、本フォーラムのを通した大きなポイントとなるので、箇条書きで要点をまとめた)

地域を元気にする方法 NPOに期待する力

1.活動の持続を期待する

    • 復旧・復興・まちづくりの当事者なので気づきにくいかもしれないが、東北被災地のNPOの活動は、他地域に比べても最先端の活動であり、その活動の継続は地域の大きな力となる。
    • 黒部市においてはその活動を参考に多くの施策を展開したいと考えている

2.全国単位でのネットワークづくり

    • 地域を越えたつながりは本来NPOが得意とするところ。
    • コロナ禍で進んだZoomのようなコミュニケーションツールの普及が意図を持ったネットワークづくりを後押しする要因になっている事は間違いない
    • 「地域を越えた」「テーマ・課題別」のネットワークということが重要。
    • 行政は「地域を越える」事が本当に苦手。
      • NPOがその隙間を埋め、他地域を含めた先進的な事例や好事例にアンテナを張る意識を持ち、積極的なアクションを起こしてはどうか。
      • つながり(地域を越えたネットワーク)を通して得られる全国の好事例(行政とNPOの対話、連携、協働)を地域の行政に紹介する。という流れを作ることが出来れば、地域におけるセクター間連携も形にしやすいのではないだろうか。

3.NPOから行政へのアプローチ

    • 行政の仕事の仕方、慣例はやはり変わらない。。。
    • NPOから行政へのコンタクト、コミュニケーションは上手に戦略を立てて進める必要がある。
      • キーマンを探してコンタクトを取る
      • 行政が信頼を置いている人(審議会委員や大学の先生など)を巻き込んでコミュニケーションをはかる。など。

最後に、NPOへのメッセージとして、たくさんの意味を込めて「継続」の重要性を伝え、まとめとした。



◯トークセッション
 登壇者 武隈義一氏(福井県黒部市長)
     石田 祐(認定特定非営利活動法人杜の伝言板ゆるる代表理事)
 (進行)鹿野順一 (特定非営利活動法人アットマークリアスNPOサポートセンター代表理事)

石田から、NPOサポートリンクが2022年に東北沿岸部のNPOを対象に実施したアンケート調査結果とその分析結果から見えてきた全般の課題を報告した。

アンケート調査の「自組織の課題」に対する解答では、特に「人と金」にまつわる不足が大きく見受けられ、『担い手の不足』『担い手を育成する仕組みが未整備』『連携に必要な基盤が脆弱』といった声が集中しており、「会員とのコミュニケーション」や「ネットワーク・連携」についての重要性は感じながらも、取り組みに至らないことが見受けられた。

進行の鹿野から
地域の課題解決への意識よりも自組織のリソースの確保が優先視されているようにも感じる。これでは地域のニーズに応えられる質や感度を保てるのだろうか」といった問いかけがあった。

それを受けて石田
批判的にみた場合、全体的にそういった課題を持つNPOは多いと思うが、今日の分科会に登壇する団体のように、それらの課題を突き抜けて活動している人もいる。
そういったアイデアを出す人とうまく連携することで運営基盤の改善はもとより地域課題にフィットした活動に展開できるのではないかと、応えた。

また、武隈市長からは、「共通した問題意識を持っていると、他地域とも繋がりやすいし、成功事例なども調べやすい。更に、中間支援組織は活躍している団体をたくさん知っている。何もないところの先を行くのは難しいけれど、事例から学ぶ機会はたくさんある」と感想をいただいた。

中間支援の役割について
連携をするにもまだまだ行政との距離は身近ではない。かといって不必要に行政と親密になることが大切ではなく、地域や地域の団体の状況を把握し、事実を行政や団体に向けて共有することが大切なのではないか。また、それらに伴って必要なネットワークを作ったり、組織間のリソースのハブになるなど、多様にすべきことはあるはず。

武隈市長は「行政としても1つ1つの団体に赴くのは大変なので、そういった仲介的なネットワークやコミュニティがあると大変助かる。そこから意見を拾えたり、集まりに参加できたりと、繋がりが生まれれば行政と協働の機会にもつながる。アクセスする際の最初のとっかかりとしてもありがたい存在になるはず」と期待を寄せてくれた。

《参考》
NPOの活動と課題・NPOが感じる地域の課題に関する調査 アンケート結果

 

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